「日本女性の美しさ」に迫る...奈良大学学生による動画　「美し記～utsukushiki～」

奈良大学（所在:奈良市山陵町1500/学長:千田嘉博）は、各時代における　「美」を研究・考察、映像を作成する、全学科横断 学生プロジェクト「美し記～utsukushiki～」を行っています。

この度、テーマごとの研究をもとに、当時の象徴的な女性像(美人像)を髪型や化粧・衣装とともに再現した映像を公開しました。

動画では、「縄文〜古墳」「奈良」「平安」「大正」「現代」といった、様々な時代に「美しい」とされていた女性像を表現。例えば縄文時代は以外にも黒に赤いステッチが入った衣装、奈良時代は花鈿（かでん）とよばれる眉間と口の端にあるピンポイントメイクが特徴、大正時代はロングスカートに細い眉、濃い目のメイクといったいわゆる「モダンガール」的なファッション、平安時代は十二単に長く艶のある黒髪、そして白粉、現代はナチュラルメイクにシンプルな濃紺のワンピースといった形です。各時代の「美しさ」をファッションやヘアメイクの変遷を通じて追うことができる動画となっています。

現代を生きる私たちが「美しい」と感じるものも、ある時代では「美しい」とは認識されません。奈良大学の全学科横断 学生プロジェクト「美し記～utsukushiki～」では、各時代における“美”の表現がどう変化していったのかを学生達が探り、当時の人々が好んだ化粧や髪型、衣装などを再現。国文学科・史学科・文化財学科の歴史考証、地理学科・総合社会学科の調査・マーケティングや心理学科の実験アプローチにより、各時代を「美」という切り口で、掘り下げてきました。研究の集大成ともいえるものが、今回の動画です。

動画の人物デザイン監修は、大河ドラマや数々の歴史映画等の人物デザインを担当してきた柘植伊佐夫氏が担当しました。奈良大学の学生の研究成果と、柘植氏による知見により再現された歴代の日本の「美しさ」を表現した動画は必見です。

動画は、「美し記～utsukushiki～」というプロジェクトのロゴが映し出された後、とある女性が暗闇の中を歩いているところからスタート。すぐに、白く輝く、美しい建物に出会います。

建物に近づき、そして中へと入る女性。建物は、まるで鏡か、プリズムに覆われているかのように、女性の姿を反射して映し出しています。

じっと覗き込んでいると、突如、反射していた女性の服や化粧が、急に変わります。頭頂部の髪がそれぞれ前後に出つつ、後ろで一本に結んでいるヘアスタイル。今で言う、リーゼントのような髪型は古墳時代の埴輪によく見られるもので非常にインパクトがあります。目の下の赤い逆三角形の化粧。そして黒と赤でまとまった衣服。過去に発掘された衣服の切れ端などから実は派手な柄や色使いをしていることがわかっており、その痕跡をベースに再現した衣服となっています。衣服・メイク・髪型の全てが、元の女性とは大きく違います。肌の色も、浅黒くなっているように見えます。

女性の姿はさらに変化。今度は「平安時代」の女性の姿が映し出されます。大きな扇子と、色鮮やかな十二単姿、そして先ほどとは対照的な、真っ白な化粧に赤い口紅が映えている姿が非常に印象的です。髪は同じく一本で結んでいるものの、真っ直ぐに結ばれており、かつ、艶のある美しいロングストレート。非常に対照的です。奈良大学が所蔵する「源氏物語絵巻」がモデルになっています。

次に登場するのは、いわゆる「大正時代」のモダンガール風の女性。短めながらも耳を隠したヘアスタイル、いわゆる「耳隠し」、帽子、特徴的なアイメイクや唇の色。その全てが先ほどの「平安時代」の姿とは、これまた対照的。ファッションは、ロングスカートで西洋的に大きく変化。時代毎の女性の感性の変化が見て取れます。谷崎潤一郎の「痴人の愛」に描かれるナオミをモデルにイメージして作られました。

今度は、ピンク色の着物を身にまとい佇む女性の姿に切り替わります。これは、奈良時代を表現しています。厚手の白い化粧に、頬の部分は赤めの化粧が、額には、不思議な紋様が刻まれています。これは、花鈿（かでん）と呼ばれるピンポイントメイクで唐の風習が伝来したものとされています。髪形も、耳の横と頭の上に輪が作られており、非常に特徴的。薬師寺の「吉祥天女」や正倉院の「鳥毛立女屏風」をモデルに再現したといいます。

再び、元の濃紺のワンピースで登場。現代的な美しさということで、シンプルなロングヘアにナチュラルメイク、着飾りすぎないのが特徴的です。不思議そうな表情で壁を見ていると、ここまで出てきた女性像がフラッシュバック。最後に「今と昔が交差する場所」という象徴的な文言と大学のロゴが映し出され、動画は終了します。

本編動画と合わせて、メイキング動画も公開。実際にどのようにして、様々な時代の女性の姿を再現したのか、順を追って見ることができるような内容になっています。ヘアメイク担当としても未知の領域だという今回の「再現」メイクを、参考資料やアドバイスを元に、一つ一つ丁寧に再現していく様が収められた動画となっています。

また、研究の課程もドキュメンタリー形式で紹介。例えば大正時代を担当した国文学科は、大正時代の文学作品から題材に選んだのは谷崎純一郎が1924年（大正13年）に発表した「痴人の愛」を軸に分析。国文学科らしいアプローチで、大正時代の女性の西欧への憧れを分析、表現しようと試みています。また平安時代を担当した文化財学科は、「源氏物語」を題材にアプローチ。屏風や文献といった、文化財学科ならではの分析の方向性で、平安時代の女性の再現に挑戦しました。このように、各学部・学科が、それぞれのアプローチで、「美しさ」の分析・再現に取り組む様がまとまったドキュメンタリー映像となっています。

公式サイトでも、プロジェクトの情報を随時公開中。制作のイントロダクション動画や、柘植伊佐夫氏へのインタビュー動画も公開中。また今後は、各学科がどのようなアプローチで今回の研究に取り組んだか、また、その成果がどう活かされているかを紹介するコンテンツも公開していきます。